Research on Humanoid Robotics

バランス維持のための運動のスイッチング制御



人は取るべき動作を巧みに「切り替える」ことによって未知の外乱に対してもバランスを維持することができます。 例えば、電車の中で立っている場面を想像してください。 電車の揺れは予想できませんが、そのような未知の外乱に対しても、我々は立ったままバランスを維持することができます。 また、急な揺れに対しては足を踏みかえることにより転倒を防ぐこともできます。 このように、我々は無意識にバランス維持の方法を選択することで様々な環境の変化にも対応できる運動機能を有しています。

一方、従来のロボットの制御では、この例のように「1. 立ったままバランスを維持する制御」と 「2. 足の踏みかえを利用してバランスを維持する制御」は独立に議論されてきました。 本研究では、それらを環境の変化に合わせてシステマティックに「切り替える」枠組みを構築しました。

参考文献
  1. K. Yamamoto, “Control Strategy Switching for Humanoid Robots Based on Maximal Output Admissible Set,” Robotics and Autonomous Systems, vol. 81, pp. 17-32, 2016.
  2. 山本, “2足歩行ロボットの軌道追従制御における最大出力許容集合と転倒回避制御への応用,” 日本ロボット学会誌, Vol. 32, No. 7, pp. 633-642, 2014.
  3. K. Yamamoto, “Maximal output admissible set for trajectory tracking control of biped robots and its application to falling avoidance control,” in Proceedings of IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, 2013, pp. 3643-3648.
謝辞
本研究はJSPS科研費25820086の助成を受けました。

運動コントローラデータベースによる運動遷移

上記のバランス維持の例をはじめ、人は様々な運動を切り替えることにより複雑な運動を実現しています。 従来、個々の運動を対象として、人がどのように運動を制御しているかについて研究が行われてきました。 例えば、人が普段行っている周期的な歩行運動では神経振動子とよばれるリズムパターン生成器が存在することが知られており、 これは非線形コントローラによって数理的にモデル化することができます。



本研究では、周期的歩行を実現する非線形コントローラをはじめ、様々な運動コントローラを持ったデータベースを構築し、 それによって多様な運動遷移を実現することを目的としています。 上の動画は、それをヒューマノイドロボットの制御に応用したシミュレーションの様子で、 停止状態から周期的歩行、再度停止といった最も基礎的な運動遷移を行った例です。 今後、より多くの運動コントローラを利用することにより、人が何気なく行っている複雑な運動遷移の仕組みを解明することを目指しています。

参考文献
  1. 山本, 志鷹, “ヒューマノイドのリミットサイクル型コントローラにおける最大出力許容集合と運動遷移制御,” 日本ロボット学会誌, 2016.
  2. K. Yamamoto and T. Shitaka, "Maximal Output Admissible Set for Limit Cycle Controller of Humanoid Robot", in Proceedings of IEEE International Conference on Robotics and Automation, May, 2015, Seattle, Washington.
  3. 山本, 志鷹, "ヒューマノイドのための運動コントローラデータベース", 第32回日本ロボット学会学術講演会, 1B1-06, 九州産業大学, 2014. 9.
  4. 志鷹, 山本, “ヒューマノイドロボットのリミットサイクル型コントローラにおける最大出力許容集合と運動遷移制御への応用,” 日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会, 2014, no. 1.
謝辞
本研究はJSPS科研費25820086の助成を受けました。

UT-μプロジェクト

http://www.ynl.t.u-tokyo.ac.jp/research/ut-mu/mu-j.html